Berlin Ensemble Grosses Haus ”K.” ベルリン・アンサンブル大劇場『K.』

ことば

街路樹がやわらかい葉をつけています。空気が乾燥していても、どこからか花の香りがただよってきて、生き返るような気分になります。(花粉症の人には申し訳ないですけど)

それにしても、こちらの樹木は背が高いです。気がつくと、首をほとんど直角に曲げて見上げて歩いています。

樹木だけでなく、人間も長身です。このあいだ訪れた教会で、10頭身くらいの男子生徒さんがいて、びっくりして、思わず見つめてしまいました。私なんか、ほぼ6頭身ですから、彼の横に並んだらおもしろかったでしょう。

さて、きょうは『K.』というお芝居を観てきました。

Friedrichstr. フリードリヒシュトラーセ 駅を西に出て、Spree シュプレー川を渡ります。
Ständige Vertretung シュテンディゲ・フェアトレートゥング という、店内に政治家の写真がたくさん貼られている、有名なドイツ料理レストラン・バーの前を通ります。
Bertolt-Brecht-Platz ベルトルト・ブレヒト・プラッツ(広場)のそばに、Berlin Ensemble Grosses Haus は 建っています。
玄関前には、「BE」(Berlin Ensemble)のマーク
玄関を入ると、チケット売り場がありました。背後の壁には、1954年3月19日のブレヒトの言葉が書かれています。「かつて演劇は廃墟で演じられていた。いまやこの美しい劇場で演じられる、単なる気晴らしではなく。君たち私たちから、平和な 我ら が生まれて、この劇場や他の多くのものが永らえることができるように」でしょうか。ちなみに、この劇場の設立は1948年だそうです。
2階席からの眺め
同じく2階席からの眺め
私たちは『K.』の最終公演日の「座席グループ5」のチケットを購入することができました。ここは最後尾から第2列です。ちなみに「座席グループ6」は視界に制限がある立見席などになります。
開演30分前から、ブッフェでは、 Führung フュールング (ガイド)があり、お酒を飲みながら聞いている人もいます。

『K.』は、カフカの『訴訟』を題材にした音楽劇です。ただ『訴訟』の筋書きとは大きく異なった演出で、カフカの他の作品や、カフカの実生活も劇中に出てきます。

開演のベルの後、無音で、緞帳に『断食芸人』の本文が映し出されます。また、劇中に登場する滅菌スタッフが背負う消毒液タンクに、黒い甲虫が描かれていたりもします。多分ほかにも別の作品が示唆されて登場していたのだろうと思います。

主人公の男 Josef K.(及びカフカ自身)を演じるのは、Kathrin Wehlisch という女優さんでした。彼女の動きはコメディアンそのもので、不条理劇がなんとも滑稽に描かれていました( Tragikomödie トラギコメディー 悲喜劇)。

Barrie Kosky という演出家は(この人もユダヤ系の背景をもちますが)、カフカがユダヤ系ドイツ人としてアイデンティティーに問題を抱えながら育ち、20歳代後半にユダヤ人劇団の「イディッシュ演劇」に熱中していた時期がある点に注目し、カフカの作品を解釈しています。

劇中で歌われる曲のほとんどが、イディッシュ語(ドイツ語方言・スラブ語・ヘブライ語などが混じり合って発展した、中東欧系ユダヤ人集団の言語)でした。

そんななかドイツ語で歌うのが唯一、カフカの恋人ドーラです。彼女は、ハイネの詩によるシューマンの歌曲を歌います。しかし、彼女の歌も最後には、イディッシュ語に翻訳したものに変わります。実はその詩を書いたハイネもまた、ユダヤ系ドイツ人でした。

いくつものシーンで字幕が巧みに演出に使われていました。

ドーラが歌っているときには常に、カフカの日記らしき記述が映されます。

Josef K.の体にヘブライ文字のようなものが、放電音とともに映し出されるシーンは、何だったのでしょう。

セリフの多くが理解できなくて、あれは何だったんだろう、というより以前に、何もわかっていなかったのかもしれませんが、視覚的にとても印象に残る上演でした。

休憩時間のブッフェ
ブッフェの飲み物と、奥に見えるのはプレッツェル

劇が終わって、俳優がたった7人、演奏者がたった6人だったと知って、びっくりしました。

終演を見計らって、次々とトヨタ・プリウスのタクシーがやってきます。
3時間あまりの公演で、23時を大きく回っていましたが、まだまだStändige Vertretung シュテンディゲ・フェアトレートゥングの店内は盛況でした。