街路樹がやわらかい葉をつけています。空気が乾燥していても、どこからか花の香りがただよってきて、生き返るような気分になります。(花粉症の人には申し訳ないですけど)

それにしても、こちらの樹木は背が高いです。気がつくと、首をほとんど直角に曲げて見上げて歩いています。
樹木だけでなく、人間も長身です。このあいだ訪れた教会で、10頭身くらいの男子生徒さんがいて、びっくりして、思わず見つめてしまいました。私なんか、ほぼ6頭身ですから、彼の横に並んだらおもしろかったでしょう。
さて、きょうは『K.』というお芝居を観てきました。












『K.』は、カフカの『訴訟』を題材にした音楽劇です。ただ『訴訟』の筋書きとは大きく異なった演出で、カフカの他の作品や、カフカの実生活も劇中に出てきます。
開演のベルの後、無音で、緞帳に『断食芸人』の本文が映し出されます。また、劇中に登場する滅菌スタッフが背負う消毒液タンクに、黒い甲虫が描かれていたりもします。多分ほかにも別の作品が示唆されて登場していたのだろうと思います。
主人公の男 Josef K.(及びカフカ自身)を演じるのは、Kathrin Wehlisch という女優さんでした。彼女の動きはコメディアンそのもので、不条理劇がなんとも滑稽に描かれていました( Tragikomödie トラギコメディー 悲喜劇)。
Barrie Kosky という演出家は(この人もユダヤ系の背景をもちますが)、カフカがユダヤ系ドイツ人としてアイデンティティーに問題を抱えながら育ち、20歳代後半にユダヤ人劇団の「イディッシュ演劇」に熱中していた時期がある点に注目し、カフカの作品を解釈しています。
劇中で歌われる曲のほとんどが、イディッシュ語(ドイツ語方言・スラブ語・ヘブライ語などが混じり合って発展した、中東欧系ユダヤ人集団の言語)でした。
そんななかドイツ語で歌うのが唯一、カフカの恋人ドーラです。彼女は、ハイネの詩によるシューマンの歌曲を歌います。しかし、彼女の歌も最後には、イディッシュ語に翻訳したものに変わります。実はその詩を書いたハイネもまた、ユダヤ系ドイツ人でした。
いくつものシーンで字幕が巧みに演出に使われていました。
ドーラが歌っているときには常に、カフカの日記らしき記述が映されます。
Josef K.の体にヘブライ文字のようなものが、放電音とともに映し出されるシーンは、何だったのでしょう。
セリフの多くが理解できなくて、あれは何だったんだろう、というより以前に、何もわかっていなかったのかもしれませんが、視覚的にとても印象に残る上演でした。


劇が終わって、俳優がたった7人、演奏者がたった6人だったと知って、びっくりしました。




